
『侠飯10 懐ウマ赤羽レトロ篇』
あらすじ
主人公は、売れないウェブライター。実家の父とは折り合わず喧嘩ばかり。記事で売れるため色々と試行錯誤している日々。そんな中、元極道がしている民宿があるから、取材をしてきてと依頼がある。民宿に到着しチェックイン、そのときにオーナーに会うも、見た目からただならぬ雰囲気がある。他にも客がいた。自己紹介をし、いざオーナーに取材を申し込もうとしたところ、柳刃と火野と名乗る人間が民宿へ来た・・・
レビュー
良かった点
- 主人公の“いまどき感”と劣等感の抱え方が等身大で共感を呼ぶ。
- 「極道×グルメ×取材」という軸への早い転換
- 料理描写が秀逸。分量まで明示され再現しやすく、読後に“作ってみたい”が湧く。
- 前作とは異なる半グレ集団の登場で緊張感を更新。
- 赤羽の“懐ウマ”レトロ感が舞台の魅力を底上げ。
気になった点
- 半グレ絡みの構図はシリーズ既視感が少しある。
- 主人公の方向転換が好み次第ではやや唐突に映るかも。
やはり面白い。気づけば1日で読了。主人公は現代的な気質で、どこか“負け犬根性”めいた劣等感を抱えている。その等身大のキャラ造形が、物語の推進力と読み味の良さに直結している。元極道のオーナーとの距離感、宿の空気、そこに割って入る来訪者たち――序盤の“極道×グルメ”路線への舵切りが、このシリーズならではの快感を再点火してくれる。
グルメ描写は今回も盤石。分量が「割合」で示されるため料理自体の再現性が高い。読んでいる最中から台所に立ちたくなる。半グレの登場は前作と響き合いつつも別グループで、既視感を避ける工夫が効いている。赤羽のレトロな街並みとB級感も“懐ウマ”の看板に偽りなし。
「幸せは、他人に求めるな」
この一文が示す通り、物語は他者依存から自分の足場を見つけ直す過程を描く。主人公が仕事の方向性を見出す転換点はメタ的なおかしみもあり、シリーズの旨味を凝縮している。
総評
シリーズ10作目にして勢いは衰えず、等身大の主人公像と“食”の実在感が読書体験を押し上げる快作。物語の推進力、キャラの魅力、再現可能なレシピ――どれも満腹。迷わず★5。
こんな人におすすめ
- “極道×グルメ”の組み合わせにピンと来る人
- 赤羽のレトロな街並みやB級グルメが好きな人
- テンポよく一気読みしたい人
- レシピを実際に再現して楽しみたい人
- 『侠飯』シリーズのファン、あるいはここから入ってみたい人
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